【連載】ブラジルを動かしてきた人たちの3つの特徴【ブラジルの歴史】

Bem vindo, amigos.

 

AKIRAです。

 

今回は「ブラジルを動かしてきた人たちの3つの特徴」と題して、「ステレオタイプな」ブラジル人の特徴をお話していきたいと思います。

 

注意しなければならないことは、ここでステレオタイプな (典型的な) 」と述べていることです。

 

例えば私たち日本人はよく海外の人から「几帳面」などとして形容されたりしますが、全員がそうではありません (私とか) 。

 

同時に日本というある一定の範囲で、似た文化や経験を共有しているので、国民や人間性にある程度、共通点が現れるのも事実です。

 

白黒つけず「大体こんなもんかぁ」といったつもりで、読んでもらえたら嬉しいです。

 

では、本題に入る前に、前回の復習と今回のキーワードを見てみましょう。

 

前回の復習

 

前回は、ブラジルが単一の輸出品に貿易を頼っていた話をしました。

 

これを「モノカルチャー経済」と呼びます。

 

具体的には、「パウ・ブラジル」「砂糖」「金」「コーヒー」でした。

 

これらの輸出品を通して、ブラジル経済は今日まで続いているのです。

 

今回のキーワード

 

これまで「政治」「経済」の話をしてきましたが、ブラジルという国が政治や経済を行っているワケではありません。

 

国はあくまで概念であり、国に住むのは私たち「人間」です。

 

そしてそこに住む多くの人々には、どの時代にも共通点がありました。

 

これを読み解くキーワードが

 

「家父長制」

キリスト教

「奴隷」

 

です。

 

この3つのキーワードを理解するだけで、これまでの歴史を背負った、現代に生きるブラジル人たちの様子が少しずつ明らかになってきます。

 

では始めましょう。

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大農場主

 

大農場とは広大な敷地や土地を指します。

 

その土地を所有する主(あるじ)を大農場主と呼びました。

 

ここで注目したいのが「農場」という言葉です。

 

日本史の授業を思い出してみましょう。

 

「農民」という言葉から日本人の私たちはどのようなイメージを持つでしょうか。

 

これは個人的な話になりますが、私筆者は「小作民」が頭に浮かびました。

 

一方的なイメージではありますが、周りと協力したり、毎日コツコツ地道に農業したり、大自然に精通していたり…といった「典型的な」日本の農民層の特徴を思い出したのです。

 

「大農場主」に話を戻すと、「農場」という言葉が入っているため、当初、そういう性格を持った人たちかと考えていましたが、実際は違ったのです。

 

彼らはとにかく仕事をすることを拒みました。

 

大きな土地に、使用人や小間使いや奴隷の全てを抱え、一国の主のように振る舞い、全てを支配したのです。

 

彼らは「砂糖」の時代に始まり、「金」「コーヒー」と資源が変わっても、それぞれの時代で存在し続けました。

 

すなわち、これらの輸出品で成功した人たちは、どの時代であろうと大農場主になったのです。彼らは共通して以下の特徴を持っていました。

 

①家父長制

 

家父長制とは、家族に対する統率権が、父親に集中している家族の形態のことです。

 

いわば暴力団の(ような)世界観です。

 

家族の中では父親の発言権は絶対でした。

 

ここで具体的に、当時の様子を見てみましょう。

 

「こうして、砂糖産業が隆盛になるにつれてエンジェーニョ主[大農場主]の権勢はいやが上にも強大になり、エンジェーニョは総督政府の権限の及ばない荘園的な存在となった。そして、エンジェーニョ主はエンジェーニョ内では、奴隷に対してのみならず、その他の者に対しても生殺与奪の権を握るほど絶対的な存在であった。」

アンドウ・ゼンパチ(1983). ブラジル史 岩波書店

 

 

キリスト教

 

言わずもがな、キリスト教は当時ヨーロッパ諸国を中心に絶大な力を持っていました。

 

ポルトガル支配下にあったブラジルも例外ではなく、全ての人々が改宗を余儀なくされたのです。

 

大農場主は勿論のこと、奴隷もキリスト教を強いられました。

 

その影響は大きく、現在ではカトリックの信者が国民の7割以上を占めると言われています。

 

大農場主は敷地内に協会まで持っており、司教は経済的に大農場主に支えられていました。

 

信仰を説くこともなく、時には怠惰で淫蕩な暮らしをしていた者もいたそうです。

 

③奴隷

 

ブラジルの一番の大きな闇はこの奴隷にあると言っても過言ではないでしょう。

 

先に述べたとおり、大農場主は楽をしながら、莫大な利益をあげることを第一に考えていました。

 

そのために奴隷の存在は不可欠です。

 

奴隷制度は長らくこの国を蝕み、世界で奴隷制度が一番遅く終わった国という汚点を今でも背負っているのです。

 

この影響は今でも如実に続いており、格差社会の根底にこの問題はいつもつきまとっているでしょう。

 

そしてこの奴隷制を長らく利用し続けた張本人が、この大農場主だったワケです。

 

まとめ

 

「政治」「経済」が繁栄していく中で、国を実際に動かしてきたのは、大農場主たちでした。

 

どの時代にも存在し、権力を持ち続けた彼らは、今でもブラジルに影響を与え続けています。

 

彼らの特徴は、「家父長制の中で豪華で怠惰な生活をしていたこと」「キリスト教であったこと」「奴隷を抱えていたこと」です。

 

…あれ…私たちは今、歴史を学んでいますが、この勉強を通して今のブラジル社会が見えてきたのではないでしょうか。

 

例えば、私たち多くの日本人からすれば、(申し訳ないですが、)今を生きるブラジル含めラテン国家の人々は、相対的に「怠惰」に映ってしまうことがしばしばあります。

 

ここで忘れてはならないことは、生まれつき彼らが怠惰なのではなく、過去500年怠惰な歴史を紡いでしまった先人が、今でもその影響を残しているということなのです。

 

今回の勉強を通して「だからブラジルにはキリスト教が多いのか」「だからブラジルでは極度な格差社会が続いているのか」ということが分かったと思います。

 

歴史を勉強することによって、その国の文化をより深く理解できるようになりましたね。

 

ブラジルの歴史の概要はこのへんで終わります。

 

さて次回から実際に、一からブラジルの歴史を勉強していきたいと思います。